「君だけが光」百合漫画レビュー
- 作者:シギサワカヤ
- 巻数:全1巻
- 初版:2018年
- 分類:GL、短編集(連作2編)、人妻
- 連載:楽園
「シギサワカヤ」様作の百合漫画「君だけが光」のレビューもとい感想です。ネタバレあるかもしれないのでご注意ください。
連作短編2作品が収められたこちらの単行本、タイトルの「君だけが光」の通り、一筋の光を頼りに生きる姿を描いた胸がきゅーっとなる内容でした。
個人的には、はじめの人妻に恋しズブズブの関係に堕ちていく社会人百合が好きです。結ばれる方が好きなので(ネタバレ)。
さて、短編集ですのでそれぞれについて簡単に振り返ってみます。
スプリングハズカム〜スプリングハズカム アゲイン
10の短編からなる社会人百合漫画。結婚式場に勤めていた「美砂」はある日式を挙げに来た「純香」と知り合い不倫関係になります。
純香への恋心を自覚しながらも美砂は現実を受け入れ、挙式を機に別れることを決意しますが、結局その後もずるずると関係を続けようとする純香の誘いに抗うことができず、さらなる深みへ堕ちていくのでした
泥沼不倫百合漫画、と思いきや結末は爽やかというかハッピーエンド。
別れたあとも好きな人の幸せを願い続ける美砂さんが素敵でした。ただ、それが果たされていないと知ったとき今度は自分がってなるんですよね。自然といえば自然なんですが、それができるのはカッコイイなぁ、と。
好きな気持ちだけではどうにもならない、ままならない想いが描かれているだけに、再会のシーンが光ります。
プレパラート〜遠き光
高校時代に出会った2人の生涯を通じた心の交流を描いた3つの短編からなる作品。
クラスから孤立気味で生きづらさを感じながらも絵に没頭しながら毎日を送る「八田」は、自分の絵のファンだと語る「崎谷」と思いがけず仲良くなります。
崎谷に惹かれていることを自覚する八田でしたが、付き合っている彼氏の話を聞かされたこと、崎谷に自分以上の絵の才能を感じたことをきっかけに、心に黒い感情が渦巻き始めます。
崎谷をハブっていた友人たちが戻ってきたことでそれは決定的となり、結局二人は疎遠になってしまいました。
そのまま卒業し社会人になった八田はある日偶然クラスメイトから崎谷の近況を知らされ、謝罪するために再び会うことを決意します。
これはそんな高校時代の青い思い出を共有する二人の絵描きの物語。
切ないんですよねぇ、報われない恋心も、自分にはない才能への羨望も、それが崎谷には伝わっていないことも。ただ、それが逆に救いなのかもしれないなぁとは思います。崎谷にとって八田は大切な友人であるのは間違いないでしょうから。
ただ一人への想いを光に、一生を遂げる八田の生き様がとても胸にぐっと来ました。自分が読んだ中ではこれだけロングスパンなストーリーは珍しい気がしますね。
一人を想い続ける二人の素敵な女性を描いた短編集、未読の方はいかがでしょうか。最後までお読みいただきありがとうございました。