「終電にはかえします」百合漫画をレビューしたい
- 作者:雨隠ギド
- 巻数:全1巻
- 初版:2013年
- 分類:GL、短編集
「雨隠ギド」様の百合漫画「終電にはかえします」のレビューもとい感想です。ネタバレが多少ありますのでご注意ください。
ギド先生といえばアニメ化もされました作品「甘々と稲妻」が有名ですね。ただ、「終電にはかえします」も百合界隈ではかなり評価が高いようです。なにせ、面白いもの。流石としかいえないもの。素晴らしいもの。
閑話休題
さて、短編7篇からなるこちらの単行本。恋が始まる瞬間に焦点を当てたもの、三角関係、片想い等々、非常にバリエーションに富んだ物語が収録されています。それぞれ簡単にまとめてみます。
ひらがな線、あいう駅より・終電にはかえします
表題作の短編を含んだ2篇。お嬢様学校のミスコンで優勝⇒女子アナ⇒サッカー日本代表と結婚して玉の輿、という華麗な計画のために邁進する「瀬戸あさき」は、同じ路線で通う後輩の「奥山ツネ」に痴漢から守ってもらったことをきっかけに仲良くなります。
他に友だちのいないツネに懐かれたことにかすかな優越感を覚える瀬戸先輩でしたが、男らしい言動の多いツネが時折見せる可愛らしい一面に触れる内、気持ちは徐々に変化していきます。
終電に帰せるんですかねぇ、っていうラストでした。まあ、一向に構わないのですが。それはさておき、恋が始まる瞬間の描写が本当にステキです。あ、頭の中真っ白になったんだなって伝わってくる。理屈を超えて惚れる展開、好きですね。
少女プラネタリウム
女子高生の「スズキさん」はある日、教室では空気のように誰とも関わろうとしない「サトウさん」の秘密を知ります。彼女と共に「タカハシさん」宅のプラネタリウム部屋に通うようになったスズキさんは、徐々に教室では見られなかったサトウさんの内面に惹かれていきます。
薄暗いプラネタリウムが醸し出す独特の親密な雰囲気が良いです。一緒に寝転がって星を見るってそれだけで何だかもう特別な関係なんじゃないかと。蓋をしようとしても溢れてきてしまう感情がとても綺麗な短編です。
一瞬のアステリズム
幼なじみの「蝶子」に密かに焦がれる「蜜美」は、彼女がクラスメイトの「はな」に恋していることに気が付きます。
「蜜美」に焦がれる「はな」は、彼女が「蝶子」に恋していることに気が付きます。
そんな彼女たちは、好きな人が好きな人を見たときに見せる表情を見てさらに魅せられていくのでした。
ややこしいですね。三角関係の短編。ただ、結末はとても爽やかでした。好きな人が恋するところをみて純粋に満たされる。答えを出さないのが答え、というところでしょうか。
永遠に少女
幽霊のみずきは、ある日自分に触れることの出来る幼女みさおと出会います。成長するみさおと交流を続けるみずきでしたが、変わらない自分と、変わり続けるみさおとの差に、やがて彼女の内心は穏やかではなくなっていきます。
みさおはいつからみずきのことが好きになったんだろうって考えると凄くグッとくるものがあります。まあ、最初からといえば最初からなわけで、変わっていくみさおの変わらない思いが魅力的です。
上に含めなかった「大人の階段の下」も甘酸っぱい感じでおススメです。他に少女プラネタリウムに登場した「タカハシさん」と「タナカさん」の馴れ初めを描いた「少女星図」が収録されています。
最後までお読みいただきありがとうございました。